監修:土肥 聡〔臨床遺伝専門医・指導医/超音波専門医・指導医/産婦人科専門医・指導医〕 最終更新日:2026/07/03
はじめに
NIPT(母体血を用いた出生前遺伝学的検査)を受けようと考えたとき、多くの方が最初に目にするのが「認証施設」という言葉です。厚生労働省と日本医学会による情報提供のもと、認証施設と非認証施設という区別は、近年ずいぶんと知られるようになりました。
一方で、実際に施設をお選びになる段階で、多くの妊婦さんが次のような疑問をお持ちになります。
「認証施設ならば、どこで受けても同じなのでしょうか?」
このコラムでは、この問いに、できるだけ誠実にお答えしたいと思います。結論を先にお伝えするならば ―
認証施設制度は、一定の水準を担保する非常に重要な仕組みです。そのうえで、認証施設の中にも「基幹施設」と「連携施設」という区分があり、さらに担当する医師の専門的背景によって、検査前後の対応の範囲は施設ごとに異なります。
この構造を正しくご理解いただくことで、施設選びの判断がしやすくなると考えています。
1. 認証施設制度とは何か
まず、認証施設制度の目的について、正しくご理解いただくことから始めます。
日本医学会出生前検査認証制度等運営委員会は、NIPTを提供する医療機関に対して、一定の要件を満たすことを認証の条件としています。この制度は、単なる検査の実施認可ではなく、地域の周産期医療体制の一部として位置づけられている点が重要です。
認証施設に求められている役割は、NIPTという「検査」そのものにとどまりません。
・出生前検査に関する正確な情報提供
- 検査前・検査後の遺伝カウンセリング
- 妊婦さんとご家族の不安や悩みへのサポート
- 出生前コンサルト小児科医との連携による、病気のある赤ちゃんを育てるための医療・福祉情報の提供
これらすべてが、認証施設制度の目的に含まれています。認証施設制度は、この意味で、「妊婦さんを検査の前後を通じて支える体制」を担保するための仕組みだといえます。
参考:日本医学会「NIPT等の出生前検査に関する情報提供及び施設認証の指針」
2. 認証施設には「基幹施設」と「連携施設」がある
ここで、多くの妊婦さんが意外とご存じない事実があります。認証施設は一枚岩ではなく、「基幹施設」と「連携施設」という二つの区分があるという点です。
基幹施設
産婦人科専門医と小児科専門医が在籍し、そのどちらかが臨床遺伝専門医の資格を持っている施設です。多くは大学病院や大規模な周産期医療センターにあたります。
連携施設
基幹施設と連携しながら、地域でNIPTを提供する施設です。連携施設では、臨床遺伝専門医、または日本産婦人科遺伝診療学会の出生前検査に関する研修を修了した産婦人科医(日本産科婦人科遺伝診療学会認定者)が対応します。
さらに、認定遺伝カウンセラー®や遺伝看護専門看護師が連携して、専門的な情報提供を支える体制がとられます。
3. 連携施設の中でも、対応範囲は異なる
ここが、このコラムで最もお伝えしたい部分です。
連携施設は、施設ごとに一律ではありません。担当医の専門的背景によって、検査前後にどこまで施設内で対応できるかが異なります。
日本医学会の指針をもとに整理すると、以下のような構造になっています。
NIPT認証施設の違い

出典:日本医学会「NIPT等の出生前検査に関する情報提供及び施設(医療機関・検査分析機関)認証の指針」(令和4年2月25日)より一部改変
※より専門性が高い遺伝カウンセリングが必要な場合、基幹施設の臨床遺伝専門医が連携施設で遺伝カウンセリングを担当する形もあります。
この表から読み取れる重要な事実
この表を丁寧に見ていただくと、以下のことがわかります。
「連携施設であっても、臨床遺伝専門医・認定遺伝カウンセラーが担当する施設では、基幹施設と同等に、検査前・陰性時・陽性時・確定検査のすべてを施設内で完結できる」
この点は、日本医学会の指針そのものが定めている構造でありながら、患者さんにはほとんど知られていない事実です。
一方で、臨床遺伝専門医・認定遺伝カウンセラーが担当していない連携施設では、陽性結果が出た場合や確定検査については、基幹施設に紹介されるかたちで対応されることになります。
これは、どちらの体制が優れている・劣っているという話ではなく、「一貫した対応が可能な体制かどうか」という選択軸が存在するということです。
4. なぜ、この違いが妊婦さんにとって重要なのか
「陽性の場合や確定検査で、基幹施設に紹介される」ということが、実際に妊婦さんにどのような意味を持つか。ここは、少し具体的にお伝えしたい部分です。
NIPTで陽性結果を受け取った妊婦さんが最も強く感じるのは、「知っている先生に、続けて診てもらいたい」という気持ちです。それまでNIPTについて説明してくれた医師と、陽性結果について相談する医師が異なるという状況は、心理的な負担が大きくなり得ます。
また、確定検査(羊水検査)を検討する段階では、以下のような流れが発生することがあります。
- 連携施設で陽性通知を受ける
- 基幹施設に紹介される
- 基幹施設で改めて説明を受ける
- 基幹施設で確定検査を受ける
- 結果を基幹施設で受け取る
- その後の妊婦健診は元の施設に戻る
この過程では、複数の医療機関を移動することになり、情報が引き継がれる過程で説明の重複や、逆に説明の抜けが生じる可能性もあります。
一方、臨床遺伝専門医が在籍している連携施設であれば、上記のすべての段階を一つの施設で、同じ医師が一貫して担当することが可能です。
これは、単なる利便性の問題ではありません。妊婦さんとご家族の心理的な負担を減らし、意思決定に必要な情報を、信頼関係の中で受け取れるという、医療の質そのものに関わる違いです。
5. 認証施設制度が「担保するもの」と「担保しないもの」
改めて整理しますと、認証施設制度は以下の役割を担っています。
認証施設制度が担保するもの
- 施設としての運用基準の遵守
- 遺伝カウンセリング体制の存在
- 確定検査への連携ルートの確保
- 情報提供の質の下限
認証施設制度が個別に規定していないもの
- 実際の担当医が臨床遺伝専門医であるか
- 検査前後の対応が同一施設内で完結するか
- 担当医が胎児超音波や遺伝カウンセリングの専門的経験をどの程度有しているか
つまり、認証施設制度は「下限を担保する制度」であって、「すべての認証施設で同じ深さ・同じ体制の診療が受けられることを保証する制度ではない」ということです。これは制度の限界ではなく、制度の性格そのものだとご理解ください。
6. NIPT前後で実際に必要となる医療機能
NIPTを「妊娠中の意思決定を支える医療プロセスの一部」として捉えると、検査前後に多くの医療機能が関わっていることがわかります。
NIPTを受ける「前」に必要となること
- 家族歴の丁寧な聴取
- 遺伝カウンセリング(検査の限界と意義の理解)
- 検査目的の明確化
NIPTの結果を受け取った「後」に必要となること
- 陽性であった場合の丁寧な説明(偽陽性・胎盤限局性モザイク等の背景を含む)
- 確定検査(羊水検査等)の適応判断への助言
- 胎児超音波所見との統合的評価
- その後の妊娠経過における継続的フォロー
- 次の妊娠への影響(再発率など)に関する情報提供
これらすべてが「一貫して」提供されるかどうかは、施設の体制と、担当する医師の専門的背景に左右されます。
7. 施設をお選びになる際の実践的なチェックポイント
認証施設の中から具体的にどこを選ぶかを検討される際、判断材料としてご確認いただけるとよい観点をまとめます。
認証施設としての基本情報
- 日本医学会出生前検査認証制度による認証を受けている施設であること
- 検査前後の遺伝カウンセリング体制が明示されていること
認証施設としての区分と体制
- 基幹施設か、連携施設か
- 連携施設の場合、臨床遺伝専門医が在籍しているか
- 陽性時や確定検査を、同一施設で対応できるか
担当医の専門的背景
- 検査前後のカウンセリングを、どのような専門的背景を持つ医師が担当するか
- 臨床遺伝専門医、胎児超音波専門医、FMF認定医などの資格の有無
検査後のフォロー体制
- 陽性であった場合の確定検査への対応(同一施設か、紹介か)
- 検査後の継続的なフォローの可否
- セカンドオピニオンへの対応
情報提供の姿勢
- ホームページ等で、検査の限界や偽陽性についての説明がなされているか
- 意思決定を急がせない姿勢であるか
8. 豊洲レディースクリニックの体制について
当院は、日本医学会出生前検査認証制度における認証連携施設として、制度上の要件を満たすことを基盤としています。そのうえで、院長が臨床遺伝専門医の資格を有していることから、先の図解でいう「連携施設(臨床遺伝専門医・認定遺伝カウンセラーが担当)」にあたる体制を整えています。
これにより、当院では以下の対応が同一施設内で一貫して可能となっています。
検査前カウンセリング:臨床遺伝専門医・認定遺伝カウンセラーによる対応
- NIPT実施
- 陰性結果の場合の遺伝カウンセリング
- 陽性結果の場合の遺伝カウンセリング:施設内で継続対応
- 確定検査(羊水検査):施設内で実施可能
- 確定検査結果を受けての遺伝カウンセリング:施設内で継続対応
- その後の妊娠経過のフォロー
こうした一貫対応が可能な連携施設は、全国的には限られています。院長が臨床遺伝専門医であることから、検査を受ける前の段階から、結果が出た後、そしてその後の妊娠経過まで、同じ医師が寄り添って対応することを大切にしています。
また、担当医の専門的背景として、以下の資格・経験を診療に活かしています。
- 臨床遺伝専門医
- 胎児超音波専門医
- FMF(Fetal Medicine Foundation)認定
- 産婦人科専門医
「認証施設ならどこでも同じ」という問いに対して、私たちは「認証施設としての水準を満たしたうえで、担当医の専門的背景から、検査前後を一貫して同じ医師が担当できる体制をお示しできる」とお答えしたいと考えています。
最後に
どの施設で検査を受けるかは、最終的には妊婦さんとご家族が、ご自身の価値観と状況に照らしてお決めになることです。
このコラムでお伝えしたかったのは、施設の優劣ではなく、以下の三つの視点があるということです。
認証施設か、そうでないか(制度としての適格性)
基幹施設か、連携施設か。連携施設の場合、臨床遺伝専門医・認定遺伝カウンセラーが担当するか(一貫対応の可否)
担当医が、遺伝学・胎児超音波の専門的背景をどの程度有しているか(対応の深さ)
これらを知ったうえで選ぶことで、ご自身とご家族の状況に合った施設を見つけていただけるはずです。
情報の整理にお迷いのある方は、どうか一人で抱え込まず、専門的な相談ができる場所を頼ってください。当院でも、施設選びのご相談を含めた事前カウンセリングをお受けしています。
ご相談のご案内
お問い合わせ:03-5534-9700
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参考文献・情報源
- 日本医学会「NIPT等の出生前検査に関する情報提供及び施設(医療機関・検査分析機関)認証の指針」(PDF)
- 日本医学会出生前検査認証制度等運営委員会「一緒に考えよう、お腹の赤ちゃんの検査」
- 日本産科婦人科学会「NIPTに関する情報提供」
免責事項:本コラムは、一般的な医学情報の提供を目的としており、特定の施設や医師の優劣を示すものではありません。個別の状況については、必ず医療機関にご相談ください。








