監修:豊洲レディースクリニック(東京都江東区豊洲|産科・婦人科) 最終更新日:2026/08/18
妊娠中の食事は、おなかの赤ちゃんの発達にどのように関わっているのでしょうか。
今回は、母親の食物繊維摂取量と5歳になったお子さんの行動特性との関連を調べた国内の研究をもとに、食物繊維の役割と妊娠中の上手な摂り方をご紹介します。
そもそも食物繊維とは?水溶性と不溶性の違い
食物繊維とは、人の消化酵素では分解されにくい成分の総称で、大きく「水溶性食物繊維」と「不溶性食物繊維」の2種類に分けられます(1)。
水溶性食物繊維は水に溶けてゲル状になる性質があり、海藻類、大麦などの穀類、果物、いも類などに多く含まれています。
腸内細菌のえさ(善玉菌を育てる栄養源)になるとされ、腸内環境を整える働きが期待されています。
一方、不溶性食物繊維は水に溶けにくく、豆類、きのこ類、根菜類、玄米などに多く含まれます。腸を刺激してぜん動運動(腸が内容物を押し出す動き)を促し、便通を助ける働きがあるとされています。
食物繊維は便秘の予防だけでなく、妊娠中に注意したい血糖値の急な上昇の抑制や、脂質のコントロールにも役立つとされ、妊娠糖尿病や脂質異常症の予防の観点からも注目されている栄養素です(2)。
妊娠中の食物繊維摂取と子どもの行動特性に関する研究
研究の概要
2026年に発表された「九州・沖縄母子健康研究」という出生前コホート研究(生まれる前から母子を追跡する研究)では、1199組の母子ペアを対象に、妊娠中の母親の食物繊維摂取量と、5歳になったお子さんの行動上の特性との関連が調べられました(1)。
この研究では、食事歴質問票(普段の食事内容を尋ねる調査票)で母親の食物繊維摂取量を評価し、お子さんについては保護者が回答する「強みと困難質問票(SDQ)」という国際的に広く使われているスクリーニングツールを用いて、
- 情緒面の問題
- 行動面の問題
- 多動性(落ち着きのなさ)
- 対人関係の問題
- 社会性行動(他者を思いやる行動)
の5つの側面が評価されました。
研究でわかったこと
結果として、妊娠中の母親の総食物繊維摂取量が多いグループほど、お子さんの「多動性の問題」と「社会性行動の低さ」のリスクが低い傾向が認められました。
摂取量が最も少ないグループと最も多いグループを比較すると、多動性の問題のリスクはおよそ半分程度、社会性行動の低さのリスクは6割程度になるという結果でした(1)。
さらに詳しく見ると、水溶性食物繊維の摂取量は多動性の問題との関連が、不溶性食物繊維の摂取量は多動性の問題と社会性行動の低さの両方との関連が、それぞれ独立して認められました(1)。
一方で、情緒面の問題や対人関係の問題との関連は認められていません。
この研究は観察研究であるため、食物繊維の摂取が直接的な原因であると断定するものではなく、あくまで「関連が認められた」という結果である点には留意が必要です。
とはいえ、妊娠中の栄養バランスがお子さんの発達に関わる可能性を示す研究として、参考になる知見といえるでしょう。
妊娠中に食物繊維をどう摂ればいい?食品例と工夫
日本人の食事摂取基準(2020年版)では、妊婦を含む成人女性の食物繊維の目標量は1日18g以上とされています。しかし実際には、20〜49歳の女性の平均摂取量は1日13g前後にとどまり、多くの方が目標量に届いていないのが現状です(2)。
水溶性食物繊維を多く含む食品
- わかめ・昆布などの海藻類
- オートミールや大麦(もち麦)などの穀類
- りんごやバナナなどの果物
- 里芋や長芋などのいも類
に多く含まれています。
不溶性食物繊維を多く含む食品
- 大豆やあずきなどの豆類
- しいたけやえのきなどのきのこ類
- ごぼうや切り干し大根などの根菜類
- 玄米や全粒粉のパン
などに多く含まれています。
摂り方のコツ
水溶性・不溶性のどちらか一方に偏らず、両方をバランスよく摂ることが望ましいとされています。
毎食、主食を全粒穀物に置き換える、汁物に海藻やきのこを加える、間食を果物にするなど、無理のない範囲で少しずつ取り入れてみましょう。
ただし、食物繊維の摂り過ぎは、かえっておなかの張りや便秘の悪化、他の栄養素の吸収への影響につながる場合もあるため、体調に合わせて量を調整することが大切です。
よくある質問
Q. 食物繊維をたくさん摂れば、子どもの発達に良い影響が確実にありますか?
今回ご紹介した研究は、あくまで統計的な関連を示したものであり、食物繊維の摂取量だけで発達の特性が決まるわけではありません。お子さんの発達には遺伝的要因や生まれてからの生活環境など、さまざまな要因が関わっています。過度に不安に思わず、無理のない範囲でバランスの良い食事を心がけることが大切です。
Q. サプリメントで食物繊維を補ってもよいですか?
基本的には食事から摂ることが望ましいとされていますが、つわりなどで食事が偏りやすい時期は、サプリメントの活用について医師に相談しましょう。
まとめ
- 食物繊維には水溶性・不溶性の2種類があり、それぞれ異なる働きが期待されています
- 妊娠中の食物繊維摂取量が多いことは、5歳児の多動性の問題や社会性行動の低さのリスクの低下と関連していた、という研究報告があります
- 日本人女性の食物繊維摂取量は目標量に届いていないことが多く、海藻・きのこ・豆類・全粒穀物などを意識的に取り入れることが勧められます
ご自身の食事内容や妊娠中の栄養バランスについて気になることがあれば、当院の妊婦健診の際にお気軽にご相談ください。
参考文献
Nguyen, M.Q., et al. (2026). Maternal dietary fibre intake during pregnancy and behavioural problems in 5-year-old children: the Kyushu Okinawa Maternal and Child Health Study. BMJ Paediatrics Open, 10(1).
厚生労働省. (2020). 日本人の食事摂取基準(2020年版).
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