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「不育症」の定義は変わってきています

不育症とは、妊娠はするものの、流産や死産を繰り返してしまい、赤ちゃんを授かることが難しい状態をいいます。

かつては「3回以上流産を繰り返した場合(習慣流産)」を対象とすることが一般的でしたが、現在は「2回以上の流産・死産を経験した段階で検査と評価を始める」ことが国際的なスタンダードです。「3回目を待たなくてもよい」というのが、現代の不育症医療の大切な考え方です。

流産の頻度と確率

  • 1回の流産:すべての妊娠の約10〜15%に起こる、決して珍しくない出来事
  • 2回以上の流産(不育症):カップルの約1〜2%に該当
  • 3回以上の流産:約0.88%

流産の本当の理由をご存じですか?

実は、流産の原因の約60〜80%は、受精卵(赤ちゃん)側の偶発的な染色体異常によるものです。

これは受精の瞬間に偶然起こるエラーであり、現代の医学をもってしても、ご自身の生活習慣や努力によって防ぐことはできません。

ですから、1回の流産でご自分を責める必要はまったくありません。

ただし、2回、3回と繰り返してしまう場合には、ご夫婦のどちらかに「流産しやすい要因」が隠れていることがあります。

日本人データで見る不育症のリスク因子

厚生労働省研究班・AMED(日本医療研究開発機構)研究班による日本人不育症患者のデータでは、代表的なリスク因子の頻度は以下の通りです。

リスク因子 頻度
甲状腺機能異常(亢進症 1.6% + 低下症 7.9%) 9.5%
抗リン脂質抗体陽性 8.7%
子宮形態異常 7.9%
凝固第ⅩⅡ因子活性欠乏症 7.6%
プロテインS低下症 4.3%
夫婦染色体構造異常(均衡型相互転座 3.0% + ロバートソン型転座 0.7%) 3.7%
リスク因子不明(原因不明) 65.1%

出典:「不育症管理に関する提言2025」(Fuiku-Labo / こども家庭庁)

① 抗リン脂質抗体症候群(APS)

血液が固まりやすい体質のため、胎盤に小さな血栓ができ、赤ちゃんに栄養や酸素が届きにくくなる状態です。

→ 診断基準を満たす場合、低用量アスピリン + ヘパリン療法がメタ解析で流産率を有意に減少させることが示されており、標準治療とされています。

② 子宮形態異常

特に中隔子宮 では流産しやすいことが知られています。粘膜下子宮筋腫なども妊娠の維持に影響することがあります。

③ 内分泌(ホルモン)の異常

甲状腺機能異常(亢進症・低下症)が最も多く、糖尿病なども含めて適切な治療でコントロールすることで良好な妊娠継続が得られます。

④ ご夫婦の染色体構造異常

均衡型相互転座やロバートソン型転座などがある方は約3.7%です。重要なのは、染色体構造異常があっても、最終的に子どもを持てる確率は一般のご夫婦と大きく変わらないことが分かっています。

⑤ 凝固因子の異常

第ⅩⅡ因子活性欠乏症(7.6%)、プロテインS低下症(4.3%)などが報告されています。

「原因不明」と言われたとき、どう受け止めればよいでしょうか

不育症の検査を一通り行っても、約65%の方では明確なリスク因子が見つかりません(Fuiku-Labo 提言2025)。

「原因不明」と聞くと、かえって不安になってしまう方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、ここに非常に心強いデータがあります。

Lundらによる大規模コホート研究(2012年)

デンマークの三次医療機関に紹介された反復流産女性 987名 を最長 15年追跡した研究では、初診から 5年以内に 66.7%(95% CI 63.7–69.7%)が少なくとも1回の生児を得ている ことが示されました。さらに、15年後には 71.1% に達しています。

つまり、反復流産を経験された方の約2/3〜3/4が、最終的に出産に至っているのです。

「原因が見つからない=治らない」ではなく、「お身体に大きな問題はないため、次回は無事に育つ可能性が十分に高い」というメッセージなのです。

検査結果を一緒に確認し、正体の分からない不安を「具体的な情報」に変えていくことが、次の一歩につながります。

心のケアを大切に

不育症は、お身体だけでなく、心にも大きな負担がかかるものです。「次の妊娠が怖い」というお気持ちは、流産を経験された方にとって、ごく自然な感情です。

不育症は、決して「特殊な病気」ではありません。 大切なのは、一人で抱え込まないで、

  • 適切なタイミングで、必要な検査を行う
  • 不要な治療は避ける(エビデンスに基づく医療)
  • ご夫婦の心に寄り添う医療を受ける

ことです。原因が分かった方も、原因不明と言われた方も、多くの方が再び赤ちゃんを授かり、無事にご出産されています。

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