妊婦さんは「企業健診」を受けるべき?

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妊婦さんは「企業健診」を受けるべき?

妊娠中に、 「会社の健康診断(企業健診)は受けてもいいの?」 「健診の検査結果で異常と言われたけど赤ちゃんに影響は?」 と不安になる方は少なくありません。

1. 妊婦さんは「企業健診」を受けるべき?

法律上の位置づけ

労働安全衛生法第66条 および同規則第44条により、企業には次のような健康診断実施義務があります。

  • 常時使用される労働者(正社員・契約社員など)に対して、1年以内ごとに1回の定期健康診断を実施することが義務付けられています。

つまり、

  • 勤務している妊婦さん → 原則として企業健診の対象
  • 扶養に入っている方・専業主婦の方 → 法律上の受診義務はなし(任意)

という整理になります。

厚生労働省「労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう」

ただし「妊娠中であること」を必ず申告する

妊娠中は、以下の検査について 必ず事前に申告し、実施可否を健診機関と相談 する必要があります。

検査項目 妊娠中の対応
胃バリウム検査(上部消化管X線) ❌ 原則受診不可(多くの健診機関で妊婦は禁忌)
胸部レントゲン(X線)検査 ⚠️ 原則回避(緊急性が低いため健診では延期が一般的)
マンモグラフィー ⚠️ 原則回避(必要に応じ超音波検査へ変更)
強い負荷をかける検査(運動負荷心電図など) ⚠️ 医師と要相談
血液検査・尿検査・血圧・問診 ✅ 通常通り受診可能

胸部X線1回の被曝量は通常0.1mSv未満であり、胎児への影響が懸念される100mSvにははるかに及ばないとされています。ただし、健診の胸部X線は緊急性・必要性が低いため、日本予防医学協会など多くの健診機関では妊婦の受診を見合わせる方針です。

日本予防医学協会「レントゲン検査Q&A」

妊婦健診がいちばん大切

実は、妊婦健診では以下の項目が 継続的に管理・確認 されています。

  • 血圧
  • 尿検査(蛋白尿・糖)
  • 貧血(血液検査)
  • 体重管理
  • 胎児の発育・心拍

『産婦人科診療ガイドライン産科編』でも、妊婦健診では妊娠経過に応じた母体・胎児の評価を行うことが定められています。つまり、妊娠中の体を評価する中心は妊婦健診であり、企業健診は 補助的な位置づけ と理解してください。

2. 健診で「異常」と言われた…大丈夫?

企業健診の判定は、原則として「妊娠していない成人」の基準で行われます。 そのため、妊娠中には正常な体の変化なのに下記のような『異常』と表示されることがあります。

① 貧血(ヘモグロビン低下)と言われた場合

妊娠中は赤ちゃんに酸素・栄養を届けるため 血液(血漿)量が約40〜50%増加します。一方で赤血球の増加はそれより少ないため、血液が薄まったような状態になり、ヘモグロビン(Hb)が低く見えます。これを「水血症(生理的貧血)」と呼びます。

軽度の貧血は妊娠中によく見られ、多くは鉄欠乏性貧血が背景にあります。鉄剤の内服や食事指導で対応可能なケースがほとんどです。

② コレステロール高値と言われた場合

妊娠中は、胎児の成長・胎盤のホルモン産生・母体のエネルギー備蓄のために、コレステロールと中性脂肪が自然に上昇します。直ちに治療が必要なケースは多くありません。出産後、通常3〜6か月かけて元の値に戻ります。

  • 総コレステロール:妊娠前比 約25〜50%上昇(妊娠後期で平均約255mg/dL)
  • 中性脂肪:妊娠前比 約2〜4倍に上昇(妊娠後期で平均 約 200 mg/dL)
  • LDLコレステロール:上昇傾向

千葉エコチル調査データ

③ eGFR低下(腎機能の指標)と言われた場合

eGFR(推算糸球体濾過量)は、血清クレアチニン値・年齢・性別から計算される 「非妊娠成人」を前提とした指標 です。

妊娠中は循環血液量の増加に伴い、腎血流量・糸球体濾過量(GFR)はむしろ増加し、その結果血清クレアチニンは低下します。

日本腎臓学会「腎疾患患者の妊娠 診療ガイドライン2017」では、「妊娠中の正確な腎機能評価はクレアチニンクリアランスを測定することが望ましい」と明記されており、eGFR単独での評価は妊婦には不正確とされています。

日本腎臓学会「腎疾患患者の妊娠」

つまり、健診結果で 「eGFR低下」「腎機能要精査」 と表示されても、妊娠中の表示としては正確でない可能性が高いです。自己判断せず、産婦人科で再評価してもらいましょう。

★健診結果は必ず妊婦健診で見せてください

妊娠中でも企業健診は基本的に受けて大丈夫です。 ただし、妊娠中は検査値の見方が通常と異なる ため、結果は必ず産婦人科で確認 してください。

  • 「要精査」と書かれていても、妊娠中としては問題ないこともある
  • 一方で、見逃してはいけない異常(例:妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、本物の鉄欠乏性貧血など)もある

だからこそ、自己判断せず、健診結果を妊婦健診の際に必ずご持参ください。

産婦人科では妊娠週数や、母体の生理的変化、既往歴や胎児発育などを踏まえて総合評価します。

よくあるご質問(FAQ)

Q1. 健診の後に妊娠に気づき、胸部レントゲンを受けてしまいました。大丈夫ですか?

A. 通常の胸部X線の被曝量は極めて少なく(0.1mSv未満)、胎児への影響が懸念される100mSvにははるかに及ばないため、心配される必要は基本的にありません。不安があれば妊婦健診時にご相談ください。

Q2. バリウム検査を受けてしまいました…

A. バリウム検査は妊娠中は原則受診不可ですが、妊娠に気づかずに受けてしまった場合でも、直ちに重大な影響が出る可能性は低いとされています。中絶を考える必要はありません。妊婦健診で必ずお伝えください。

Q3. 健診の結果が郵送で「要精査」と来ました。すぐ内科に行くべき?

A. まず妊婦健診の主治医にご相談ください。内科では非妊娠基準で判断される可能性があり、不要な検査・投薬につながることがあります。

Q4. 扶養に入っていますが、人間ドックは受けるべき?

A. 法律上の義務はありませんが、妊娠中であれば妊婦健診で十分です。あえて人間ドックを受ける必要はないケースがほとんどです。

参考文献・参考資料

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